老人ホームを探す前に整理する4つのポイント
介護保険法の施行から老人ホームは年々増え続けており、北九州市内だけでもその数は500軒を超えました。ただ、一口に老人ホームといっても、その種類は様々です。
入居後も住み慣れた自宅と同じような生活ができるサービス付き高齢者向け住宅もあれば、手厚い介護サービスが強みの介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームなどがあります。そのため、まずは老人ホームに入居する方(入居者)の心身はどういった状態なのか? また入居者にはどのような介護サービスが必要なのかを考えておくことが大切です。
老人ホーム選びで失敗してしまう理由
同じ賃貸住宅でも老人ホームは一般住宅とは違い、ハード面(施設や設備)よりもソフト面(人材や介護技術)を重視して選ぶ傾向があります。なぜなら、老人ホームの入居者は日常生活で何かしらの支援が必要な状態になっている人が多いので、そこで働く介護スタッフがきちんと対応してくれなければ、入居者は安心して生活することができないからです。
もちろん、建物の構造がしっかりしていたり、最新の設備が整っていたりしていることも入居者や子供(入居者を介護する子供)の安心につながります。しかし、施設選びで最も欠かすことができないのは「介護に対する考え方」や「どのような人がその施設で働いているのか?」ということではないでしょうか。
こうしたことから、多くの人はインターネットで気になる老人ホームの口コミ情報を集めたり、知り合いからお勧めの老人ホームを教えてもらったりしながら親を預ける施設を検討します。とは言え、そうした情報を集めても、なかなか結論が出せない人もいるのが現状です。なぜそのようなことが起こるのでしょうか? なかなか結論が出せない人の多くは、入居者や子供の希望をきちんと整理せず、いきなり評判の良い施設の情報を集めている傾向にあります。
そのため、評判の良い施設に見学に行っても、「予算が合わない」「交通の便が悪い」といった理由で、もう一度探し直さなければならないケースも少なくありません。そこで、このページでは「良い老人ホームを探す前にやるべきこと」について、それぞれ解説していきたいと思います。
良い老人ホームを探す前に行うべきこと
2000年に介護保険制度が施行されて、現在では数多くの老人ホームが開設されています。その中で私が身を置く北九州市でも総称して老人ホームと呼ばれる施設の数は500軒を超えました。ここで老人ホームを探している人が500軒ある施設すべてを見学に行くことができるのであれば、いずれは希望に合う施設を見つけることができるしょう。しかし、現実的にはそうした時間を確保することができないというのが現状です。
たとえば、病院でリハビリをしているが、1ヶ月後には退院しなければならない。もしくは、認知症の周辺症状が悪化して、最近は親から目が離せない状況になっている。実際はこのような状況で老人ホームを探さなければならないので、その時間は限られているのです。
また、一口に老人ホームと言っても、サービス内容は施設ごとでそれぞれ異なります。認知症ケアに特化したグループホームや在宅復帰を目指すためのリハビリに力を入れている介護老人保健施設。このように老人ホームの種類で得意とする分野は大きく異なるのです。あとは同じグループホームでも、サービス内容や利用料金は少しずつ異なりますので、こうしたことを考慮しながら施設を探さなければなりません。
そこで、良い老人ホームを探す前に行わなければならないのは「親(入居者)の心身の状況、また親と子供の希望を整理する」ということです。実際に整理しなければならない項目は、主に「老人ホームを探す地域」「毎月の予算」「希望の入居時期」「親がどのような生活を望まれているか」の4つになりますでの、次節で詳しく解説します。
整理すべき4つのポイントを解説
1つ目の「老人ホームを探す地域」から順番に解説していきますが、前提条件として親が“認知症を患っている”もしくは“一人でトイレに行けない状態になっている”と仮定した上でお話しします。親(入居者)と子供が近くで生活しているケースでは、老人ホームを探す地域で特に悩むことはありませんが、子供が悩んでしまうのは、親と子供の住まいが離れているケースです。
たとえば、親が八幡西区、子供が小倉北区で生活していた場合、どちらの地域で老人ホームを探せばよいのでしょうか?
このようなとき、私が老人ホームを探している方(主に子供)にお話しするのは、「○○さん(子供)が通いやすい小倉北区周辺で施設を探しましょう」ということです。なぜなら、親を老人ホームに預けても、やはり子供の支援は必要だからです。実際、体調を崩したときの入院手続きや入院中の衣服の洗濯は基本的には子供が対応しなければなりません。その他にも、子供の面会は老人ホームに入居したばかりで不安な日々を過ごしている親の心の支えとなります。
そのため、特別な事情がない限りは、子供が通いやすい地域で老人ホームを探すようにしましょう。
2つ目は「毎月の予算」です。老人ホームをはじめて探す方にとっては、一体どれくらい費用がかかるものなのかがわからずに不安を抱えている人も少なくありません。
たとえば、「入居一時金は1千万円以上かかるのか?」「毎月の費用を10万円以内に抑えることができるのか?」というように、はじめての経験から必要な費用が想像できずに不安が募るのです。実際、北九州市内には、入居一時金が1千万円を超える施設もありますし、中には毎月の費用が20万円以上かかる施設もあります。その一方で、入居一時金が0円の施設や毎月の費用が10万円以下の施設もあります。
もちろん費用の違いによって“施設の所在地”“居室の広さ”“サービス内容”はそれぞれ異なりますので、単純に費用だけで施設を決めるわけにはいきません。しかし、親や子供の希望に合う施設が見つかったとしても、その費用の支払いができなければ、結局は入居の申し込みをすることができないのです。
したがって、おおよそで構いませんので、毎月の予算を決めてから老人ホームを探すようにしましょう。
3つ目は「希望の入居時期」です。一般の賃貸住宅選びとは異なり、老人ホーム選びでは限られた期限内に探さならなければならないケースが多いです。
たとえば、親の認知症が悪化して常に目が離せない状態になった。大腿骨頸部骨折により病院でリハビリを受けているが、来月末には退院しなければならない。多くの場合は、こうした状況の中で老人ホームを探さなければなりません。このようなときに問題になってくるのが、希望に合う老人ホームは見つかったが、「その施設に空き部屋が無かった」ということです。
実際、施設ごとに入居定員が定められていますので、空き部屋が無ければ親を預けることはできません。とは言え、子供が在宅介護に限界を感じて老人ホームを探している状況では、空き部屋が出るまでずっと待ち続けるわけにはいかないこともあります。こうしたことから、老人ホームを探すときは、「希望の入居時期」と「空き部屋が出るまで待てる期間」などを事前に考えておくようにしましょう。
そうすることで、各施設の空き状況と待機者の人数を確認しながら希望の時期に入居できるかどうかの予想ができます。
4つ目は「親がどのような生活を望まれているか」です。一口に老人ホームと言っても、日中の過ごし方は施設ごとで異なりますが、ここでポイントになるのが、老人ホームに入居しても「親がデイサービスやデイケアに通いたいかどうか」ということです。
老人ホームは大きく分けると、施設に入居しても自宅と同じようにデイサービスや訪問介護(ヘルパーの派遣)が利用できる「ケアハウス」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「住宅型有料老人ホーム」とそうした居宅の介護サービスが利用できない「グループホーム」「介護付有料老人ホーム(介護付)」「特別養護老人ホーム」などに分かれます。
老人ホームに入居しても、親が「通い慣れたデイサービスを利用し続けたい」と希望されている場合は、ケアハウスやサ高住などの中から施設を選ぶようにしましょう。その一方で、親がデイサービスで日中過ごすことを苦痛に感じている。もしくは、認知症の進行や身体機能の低下でアットホームな雰囲気や手厚い介護を重視される場合は、グループホームや介護付などを選ばれることをお勧めします。