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親を老人ホームに預ける時期の見極め方

親を老人ホームに預ける時期の見極め方

人生の中でなかなか経験することのない老人ホーム探し。この経験に多くの子供(親を介護する子供)は戸惑います。実際、現役世代の住まい選びとは違い、老人ホームを探すのは親(老人ホームの入居者)自身ではなく、親の在宅生活を支えている子供が中心になっているケースがほとんどです。

また、その時期も親が望んでいるタイミングではなく、在宅介護に限界を感じた子供のタイミングになります。そのため、親に老人ホームの話を切り出すタイミングをいつにするのかを悩まれている人も少なくありません。

そこで、この章では親の気持ちや心身の状況を踏まえて、「親を老人ホームに預ける時期をいつにするのか」について解説していきます。

このようなとき、あなたならどう対応されますか?

在宅での介護に限界を感じて、介護をしている家族が「親を老人ホームに預けなければならない」と考えたとき、その時期をいつにするかで悩まれて、なかなか行動に移せない人は少なくありません。

こうしたことの根底には、家族の「もう少し私が介護を頑張れば、親も在宅生活が継続できる」という思いがあるからではないでしょうか。ただ、この「もう少し」という基準は世の中にはありません。

このことを決められるのは介護をしている家族だけです。そして、親を老人ホームに預けることは「介護を放棄した」というように感じてしまうため、家族は限界まで在宅介護を続けてしまうのです。

その他にも「親が老人ホームに入ることを嫌がっている」、もしくは「老人ホームの入居を勧めても拒否されることがわかっているから話を持ちかけることができない」という理由から行動に移せていない場合もあります。

やはり、住み慣れた自宅で人生の最期まで暮らしたいと考えている高齢者は多いです。そのため、家族が説得しようとしてもそう簡単には納得してくれないのです。では、親が老人ホームの入居に応じてくれるまで、家族は在宅介護を続けるべきなのでしょうか?

実際には、入居する人(以下、入居者)と介護をしている人(以下、介護者)の置かれた状況は人それぞれで異なるため、答えを1つに絞るわけにはいきません。そこで、このページでは入居者や介護者の状況に見合った老人ホームを探す時期を3つに分けて解説していきます。

老人ホームの入居者が自ら施設を探すケース

一口に老人ホームと言っても、入居者は介護が必要な状態になって施設に入っているのかというと必ずしもそうではありません。入居者の中には現役で仕事をされている人もいますし、毎年のように海外旅行を楽しまれている人などもいます。

このような状況の方々は、お一人でも自立した生活が続けられるにも関わらず、元気なうちから施設に入居しているのです。その理由としては、「介護が必要になっても同じところで暮らしたい」「一人暮らしが不安になった」「毎日の食事を作るのが億劫になってきた」などがあります。

そして、こうした理由の他にも「家族になるべく負担をかけたくない」という思いも含まれているのではないのでしょうか。したがって、実際に自立されている人が自ら老人ホームを探そうとする場合で家族が悩むようなことはほとんどありません。

このようなときは、本人だけでは負担になる「地域にある老人ホームの情報集め」や「施設見学の同行」などの支援をすればよいのです。

たとえば、親が「近くに施設がたくさんあるから選べない……」と悩まれているようであれば、家族はどのような老人ホームでの生活が親に合っているのかを一緒に考えて施設の情報を集めてみる。

また、車がないので「複数の施設を見学するのが大変」ということであれば、家族と同行して見学をすることで親も喜んでもらえるのではないでしょうか。

あとは、親が決めた施設との契約時に立ち会ったり、引っ越し作業を手伝ったりすることで滞りなく入居手続きを進めていけるでしょう。

認知機能の低下で在宅生活が難しくなるケース

人は誰しも加齢に伴って、認知機能や身体機能は少しずつ低下していきます。そこで、在宅生活を続けるために子供の支援を受けたり、介護サービスを利用したりするのですが、子供も自分の生活があるため、そうした支援がずっと続けられるかどうかはわかりません。

実際、親の介護は子育てとは違い、時間の経過とともに支援しなければならないことが増えていきます。たとえば、重たい荷物が持てなくなった母親の買い物を手伝ったり、偏った食生活を続けている父親のために食事を作ったりする。さらには親が認知症を患ってしまい、常に目が離せない状況になってくると精神的な負担が一気に大きくなります。ただ、子供だけで親の在宅生活を支えきれなくなった時点で介護サービスを導入する方は多いです。

そうしたサービスの利用で子供の介護負担は一時的に軽減されますが、その負担が無くなるわけではありませんので、いずれ限界に達することもあります。この限界に近づいたとき、子供は親を老人ホームに預けるかどうかを検討するのですが、ここで問題になってくるのは「身体は動くのに、なぜ老人ホームに入らなければならないのか」という親からの反発です。

やはり多少無理をしてでも身体が動かせるのであれば、住み慣れた自宅で暮らし続けたいのです。そのため、子供が老人ホームの入居を勧めても、なかなか首を縦に振ってくれません。

ただ、このようなケースで子供が負担に感じているのは、身体機能の低下ではなく、認知機能の低下で必要となる日常生活の支援です。たとえば、「家族が服薬の管理をしないと薬を飲み忘れてしまう」「一人で勝手に外出して何度も道に迷ってしまう」「ガスの消し忘れが増えてきたので料理を止めさせようとしたが理解してくれない」といったことが積み重なって、精神的な負担が限界に達するのです。

とは言え、在宅生活を続ける上で子供の支援が欠かせなくなっている場合、親は言葉には出さなくても、子供に対して「申し訳ない」という感情は持っています。そのため、意外にも老人ホームの入居をすんなり受け入れてくれる場合もありますが、実際にその答えは親に聞いてみなければわかりません。

したがって、子供が在宅介護に限界を感じたときは、まずはそのことを親にきちんと伝えることが大切です。親に老人ホームの入居について尋ねたとき、すんなり受け入れてくれた場合は、親の希望に合う施設を一緒に探せばよいので問題になることはありません。
その一方で頑なに拒否されてしまった場合、子供はどのように対応すればよいのでしょうか? 実際、子供に「多少強引でも嫌がる親を施設に預ける」という気持ちがないのであれば、その時点では老人ホーム選びを見送るしかありません。

ただ、子供(あなた)が「在宅介護に限界を感じている」という事実は変わりませんので、そのときは利用している介護サービスを見直して、可能なかぎりあなたの介護負担を軽減するようにしてください。

たとえばデイサービスの利用回数を増やしたり、はじめから老人ホームの入居を勧めるのではなく、ショートステイ(短期間の宿泊サービス)などを利用したりして、施設での生活に少しずつ慣れてもらうようにするのです。そうしているうちに、親の「老人ホームには入りたくない」という気持ちも次第に薄れてきますので、強引に説得しなくても老人ホームの入居を受け入れてくれる日が必ず訪れます。

あとは、その時期が訪れるまで、あなたが介護疲れで倒れてしまわないよう体調管理に十分気をつけるようにしましょう。

身体機能の低下で在宅生活が難しくなるケース

前節でもお話ししたとおり、加齢とともに親の身体機能は必ず低下していくため、子供の支援が必要になる時期は訪れます。はじめは買い物や調理などのような支援だけで親の生活が維持できる場合が多いです。しかし、人生の終末期に近づいてくると排泄や入浴にも介助が必要になる場合もあります。

こうしたとき、子供が親の近くに住んでいるのであれば、毎日のように通って、親の生活を支え続けることができるかもしれません。たとえ子供が近くに住んでいなくても、訪問介護(ヘルパーの派遣)やデイサービスなどを利用することで親の在宅生活を支援することもできます。

そうした状況の中で、子供が「これ以上は在宅介護を続けることができない」と感じるきっかけの一つが“親が一人でトイレに行けなくなる”です。

度重なる骨折で入院を繰り返して下半身の筋力が著しく低下する。また、脳梗塞の後遺症で身体にマヒが残ってしまう。こうしたことが原因で排泄する度に介助が必要な状態になってくると、子供は「親を老人ホームに預けるしかないのではないか」と考えるようになります。
中には、このような状態になった親を在宅で介護している人もいますが、日中は仕事で介護できる時間が限られている方などにとっては現実的に難しいようです。

なお、この場合は骨折や脳梗塞などの治療(もしくはリハビリ)中に老人ホームを探すケースが多いです。また、認知機能が低下した親のケースとは異なり、本人も介護状態になっていることを自覚していますので、老人ホームの入居を拒否されることはほとんどありません。
あとは、どのような状態になるまで在宅介護を続けられるかどうかが家庭の状況によってそれぞれ異なるだけです。

実際、こうしたケースでは親自身からも希望が確認できる場合もありますので、子供が在宅介護に限界を感じたときは本人の希望をしっかり確認しながら施設を探すようにしましょう。