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県外にいる親を呼び寄せて老人ホームに預ける

県外にいる親を呼び寄せて老人ホームに預ける

これまで元気に過ごしていた親が「認知症を患う」「脳梗塞の後遺症で身体に麻痺が残る」といったことから一人暮らしの継続が困難になるケースは少なくありません。

こうしたとき、親の自宅の近くに子どもが住んでいれば、子どもの支援と在宅の介護サービスの利用で一人暮らしを継続することができることもあります。その一方で、頼れる子どもが近くに住んでいない場合はどうなるのでしょうか?

頼れる子どもが近くに住んでいない場合はどうなる?

認知症の進行で服薬や冷蔵庫の食材の管理ができない。または歩行が不安定なので、一人で外出することができない。

このような状況になってしまうと、在宅の介護サービスだけでは日常生活に支障をきたすようになります。

そこで、親と離れて暮らしている子どもは「親との同居」、もしくは「親を老人ホームに預ける」といったことを検討します。今回は、その中でも「県外にいる親を呼び寄せて老人ホームに預ける」というテーマに絞り、そのときに注意すべきことについて解説していきます。

老人ホームの入居に納得してくれるのか?

親と子どもが近くで暮らしている場合とは違い、離れて暮らす親の介護はある日突然訪れる場合が多いです。

実際、子どもが近くで暮らしている場合は、頻繁に通うこともできますので、親の暮らしの小さな変化に気づくことができます。

たとえば、きれい好きだった母の部屋が最近散らかるようになった。毎日手間暇をかけて料理していた母が、父の死をきっかけにスーパーの弁当や総菜で食事を済ませるようになった。冷蔵庫の中の賞味期限切れや痛んだ食材をそのままにしている。

このように、電話の会話だけでは気づけない小さな変化から、そう遠くないうちに起こる介護が予測できるのです。

そうした変化に気付いた場合、子どもは親の暮らしが気になるようになるため、それまで以上に親の自宅に足繁く通うことになるでしょう。また、そうすることで親の生活に張りが生まれますし、日常生活の不安も和らぎます。

その一方で、親の自宅と離れた地域で子どもは暮らしているので、実家に帰るのは“盆と正月”というような頻度であれば、親の暮らしの小さな変化にはなかなか気付けません。

したがって、子どもが気付くのは何かしらのトラブルが発生したときになることもあります。つまり、その時期はある日突然訪れるのです。こうしたとき、子どもは「一人暮らしの継続は難しいだろう」と考えて、親の老人ホームを探す場合もありますが、その前に確認しなければならないことがあります。

それは、親自身が「老人ホームの入居に納得してくれるのか?」ということです。

一人暮らしをされている高齢者の中には、その生活を続けるために「自分で何とかしなければならない」という強い気持ちを持たれている人も少なくありません。

また、子どもの立場からすると、「このような状態で親の一人暮らしを続けさせることはできない」と感じていても、当の本人は「この生活が私にとっての普通」と考えているため、老人ホームの入居を頑なに拒否される場合もあるのです。

中には、「私も一人で暮らすのが不安になってきたから、あなたの言うとおりにするわ」と子どものアドバイスに対して素直に耳を傾ける方もいます。そのときは、子どもの近くで暮らすことを望まれるはずですので、親を呼び寄せる際に苦労することはないでしょう。

その一方で、老人ホームの入居を拒まれる方に対しては、どのようにして説得すればよいのでしょうか?

私の経験から感じたのは、そうした状況の高齢者はすぐには説得できないということです。なぜなら、老人ホームの入居を拒まれる方というのは、先ほども説明したとおり、本人なりには「自立した生活が送れている」と考えているからです。

したがって、その時点ではどんな説得をしても、なかなか首を縦には振ってくれません。そのため、このようなときは、すぐに説得しようとするのではなく、ゆっくりと時間をかけて親を納得させる必要があります。

ただし、離れて暮らす親の日常生活が乱れているにもかかわらず、そのままじっとしているわけにもいきません。そのため、こうしたときは在宅の介護サービスを利用しながら、親の気持ちが変化するのを待つことが大切です。

それまでに介護サービスを利用していなかったのであれば、まずは介護申請を行う。その一方で、すでに介護サービスを利用していたのであれば、担当のケアマネジャーに相談してサービス内容を見直してもらう。

そうすることで、離れて暮らす子どもの不安を和らげることができます。

なお、加齢とともに親の身体機能や判断力は少しずつ低下してきますので、本人が「もうこれ以上は一人暮らしを続けることができない」と感じる時期が必ず訪れます。

その時期まで無事に待つことができれば、親もあなたの話に耳を傾けてくれますので、本人の要望を聞きながら一緒に老人ホームを探すようにしましょう。

そもそも親を呼び寄せるべきなのか?

離れて暮らす親が老人ホームの入居について前向きに検討してくれるようになった場合、まずは親の希望を確認することになります。そのときに子どもの立場として判断に迷うのは老人ホームを探す地域です。

親が住み慣れた地域で老人ホームを探した方がよいのか? それとも、子どもの介護負担を考慮して、親を呼び寄せた方がよいのか? ただ、親が住み慣れた地域には知り合いもたくさんいますし、老人ホームに入居しても実家をそのまま残すのであれば、「親の自宅の近くで探した方がよいのか」と考える人も少なくありません。

実際、この2つの選択肢については、どちらか一方が正しくて、もう一方が間違っているわけでもありません。

そこで、この項ではそれぞれの家庭の事情に合った地域の選び方についてお話ししていきます。

地域選びのポイントになるのは、入居者自身が在宅の介護サービス(訪問介護やデイサービスなど)を利用することで自立した生活が送れるかどうかです。

具体的にはそのサービスで自立した生活が送れるのであれば、親の希望を優先する。反対に認知症の進行や病気の後遺症で常に見守りや介助が必要になったのであれば、親の希望を聞きつつも、最終的には子どもの住まいの近くで老人ホームを探す。

これは、あくまで私の経験に基づいた1つの基準にしかすぎませんが、将来のことを考えると早めに親を呼び寄せることが望ましいです。

なぜなら、どんなに手厚い介護サービスを提供する老人ホームに親を預けても、子どもの支援が必要でなくなるわけではないからです。

たとえば、眼科や皮膚科などの外来受診の同行や入退院時の手続き、また自己決定ができなくなった親の代わりに子どもが治療方針を決めなければならない場合もあります。実際、こうした支援は親が歳を重ねるにつれて増えていく場合が多いです。

その他にも、親を呼び寄せるときは「長距離の移動に耐えられる体力が残っているのか」ということも考慮しなければなりませんので、しっかりとその時期を見極めるようにしましょう。

入居前に親を施設に連れていくことはできるのか?

県外にいる親を呼び寄せるといっても、その状況は人それぞれです。親が老人ホームに入居することについて納得しているケースもあれば、そのことをきちんと理解してもらえないまま、だましだましで入居につなげるケースもあります。

このようなときに問題になってくるのが、「入居前に親を施設に連れていくことはできるのか?」ということです。

一般的には、老人ホームに入居する前に入居予定の方の心身の状況を施設の担当者(施設長や管理者)が確認するための面談が行われるのですが、本人が遠方にいることから面談の調整が上手くいかない場合もあるのです。

入居者が元気な高齢者であれば、こうした問題を抱えることはありませんが、今回のケースは常に見守りや介助が必要になった親の老人ホーム探しを想定しています。

その中で、子どもの本心では“親を連れてくるのは施設に入居するとき”と考えていますが、その一方で施設の担当者は“面談してみないとうちの施設で対応できるかわからない”と考えています。実際、子どもの立場から考えれば、面談した後にまた親の実家に連れて帰るのは本当に大変なことです。

とは言え、施設の担当者の立場から考えれば、面談せずに受け入れたけれど、入居後に「やはり、うちの施設では対応できません……」とは気軽に言えないのが本音なのではないでしょうか。ただし、県外にいる親を入居前に必ず施設に連れて行かなければならないわけではありません。面談が必要かどうかを見分けるポイントは、「親が老人ホームの入居に納得しているのか」ということだけです。

入居に納得しているのであれば、共同生活が苦手な人でも1人では歩けない人でも問題ありません。あとは、親の希望と心身の状況に合った施設を探せばよいのです。その一方で、入居に納得していないのであれば、老人ホーム選びは慎重に行わなければなりません。

なぜなら、こうした状況の方を受け入れるためには、入居する施設の対応力が重要になるからです。

実際には親が認知症を患っているケースが多いのですが、生活環境の大きな変化に戸惑ってしまい、突然大声を出したり、施設から抜け出そうとしたりする人もいます。そのため、あなたの親が施設に入居した後にそのような状況になっても「うちの施設は大丈夫ですよ!」と言ってくれる施設を探さなければならないのです。

とは言え、老人ホームの基本的な入居対象者は「共同生活を営むことのできる人」となりますので、どのような状況の人でも受け入れてくれるわけではありません。

したがって、施設に相談するときは親の心身の状況や性格、また本人がこれまでどのような人生を歩んできたのかなどについて見学した施設の担当者にきちんと説明するようにしましょう。そうすることで、各施設の担当者も具体的なアドバイスをしてくれますので、その内容を比較しながらお願いする施設を選べばよいのです。

その結果、安心して親を預けることができる施設を見つけることができるでしょう。