入院先の病院から老人ホームを探す
人は誰しも加齢に伴い、身体機能や判断力は低下していきます。その中で高血圧や糖尿病などを患って医療機関のお世話になる機会は増えてきます。
さらに玄関先で転倒して大腿骨を骨折したり、不規則な生活がたたって脳梗塞を患ったりして入院するケースもあります。ここで、入院したのが現役世代の方であれば、入院中は失った機能を取り戻したり、復職を目指したりするためのリハビリが中心となります。
その一方で、高齢者が入院するケースでは、元々の体力やリハビリに対する意欲が低下しているため、どんなに頑張っても期待通りの結果に至らないこともあるのです。
自宅に帰っても一人では入浴できないし、もしかしたら一人でトイレにも行けないかもしれない。このような状態で退院日が迫ってきた場合、あなたならどうしますか?
「このまま自宅に帰すわけにはいかないので急いで空き部屋のある老人ホームを探す」、もしくは、「仕事を休んででも親の介護を優先する」など、家庭の状況によって導き出す答えは人それぞれで異なります。
そこで今回は、親が入院したときに子供はどのような流れで答えを導き出せばよいのかについてお話ししていきたいと思います。
退院に向けてどのような行動が必要になるかを確認する
基本的に脳血管疾患(脳卒中や脳梗塞など)や骨折などのように発症後にリハビリが必要となるケースについては、入院期間が長めに設定されています。
たとえば、病状が安定した時期に集中的なリハビリテーションを行う回復期リハビリテーション病棟では、入院期間が60日~180日以内(対象疾患によって異なる※下表参照)となっています。
疾 患 |
発症から入院 |
病棟に入院 |
|
---|---|---|---|
1 |
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症又は手術後、義肢装着訓練を要する状態 |
2か月以内 |
150日 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頚髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 |
2か月以内 |
180日 |
|
2 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折又は 二肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態 |
2か月以内 |
90日 |
3 |
外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群 を有しており、手術後または発症後の状態 |
2か月以内 |
90日 |
4 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は 靱帯損傷後の状態 |
1か月以内 |
60日 |
5 |
股関節又は膝関節の置換術後の状態 |
1か月以内 |
90日 |
実際には、この期間中で失われた機能回復に努めるのですが、病気やリハビリの知識と経験が乏しい家族にとって、親がどの状態まで回復するかどうかについては、なかなかイメージできません。
そのため、主治医やリハビリの専門家である理学療法士や作業療法士からアドバイスを受けながら在宅復帰が可能かどうかを判断するのですが、このときは主治医や理学療法士などに家族の方から積極的に質問するという心がけが大切です。
なぜなら、この文章を読んでいるあなた以上に親の退院後のことを考えている人はいないからです。
もちろん、医療機関の専門家(医師や理学療法士など)も退院後に困らなくていいようにアドバイスをしてくれます。しかし、その医療機関にはあなたの親だけでなく、様々な病気を抱えた患者さんが入院していますので、付きっきりでは対応してもらえないのです。
中には、専門家からのアドバイスが曖昧だったため、家族はどのような手順で行動すればよいかわからずに退院日がどんどん迫ってしまう場合もあります。
こうしたことを防ぐためにも、退院時はどのような状態まで回復する見込みがあるのか? また、自宅で介護をする場合はどのようなことに気をつけなければならないのか? 遠慮せずに専門家に質問するようにしましょう。
そうすることで、早い時期に在宅介護が可能かどうかの判断ができますし、それが難しいと感じた場合は入院中にゆとりを持って老人ホームを探すことができるでしょう。
在宅復帰に対する親の気持ち、家族が行える在宅介護の整理
当相談窓口では、これまでに様々な老人ホームの入居相談に対応してきましたが、病気やケガで入院することになっても、退院後は「住み慣れた自宅に帰りたい」と思われる人は少なくありません。
こうしたとき、その人の暮らしを支える家族は、「どうすれば本人の願いを叶えることができるのか」と考えます。
実際に介護をする家族が正社員として働かれている場合でも在宅の介護サービスを利用することで、仕事と介護の両立が実現できるケースはたくさんあります。
その一方で、介護が必要な人(親)が「一人でトイレに行くことができない」「認知症が進行して目が離せない」という状態になってしまった場合は、在宅の介護サービスを目一杯利用しても両立が難しいケースもあります。
こうようなときに、家族の誰かが仕事を辞めて親の介護に専念するのか? もしくは、親の願いを叶えることは難しいと考えて老人ホームに預けるのか?
導き出す答えはそれぞれの家庭の状況によって異なります。
ここでは前項で確認した退院時の親の心身の状況を考慮して、親とじっくり話し合いながら検討するようにしましょう。なお、老人ホームに親を預けたとしても、入居後に心身の状態が回復すれば、自宅に連れて帰ることもできます。
実際、そう考えれば、「親の願いを叶えることができない」という家族の後ろめたい気持ちも少し和らぐのではないでしょうか。
中には、「家族に迷惑をかけたくない」と思われたり、入院中に「自宅より看護師や介護スタッフのお世話になった方が安心して暮らせる」と感じたりして、親自ら老人ホームの入居を決断される場合もあります。
こうしたことは、本人に直接確認してみないとわからないことです。また、この希望を早い時期から知っておくことで、退院に向けての行動が明確になってきますので、適切なタイミングを見計らって確認するようにしましょう。
施設見学は早めに済ませて検討する時間に余裕を持たせる
親子でじっくり話し合った結果、退院後は親を老人ホームに預けることになった。こうしたとき、老人ホームを探す家族が気をつけておくべきことは、「老人ホームの見学は早めに済ませておく」ということです。
なぜなら、どんなにたくさんの老人ホームの資料を取り寄せても、見学をせずに親を預ける施設を決める人はいないからです。
これは、最も重要な判断材料は“施設見学”であることを意味しています。
実際、施設のパンフレットを見て良い印象を持っていたにもかかわらず、見学に行って悪い印象に変わるケースはありますし、その逆のケースもたくさんあります。したがって、こうした判断材料をたくさん集めるために施設見学を早めに済ませておくのです。
とは言え、ただ闇雲に老人ホームを見学していけばよいというわけでもありません。
当ホームページの「老人ホームを探す前に整理しておく5つのポイント」や「入居者の状況に合った老人ホームの種類の選び方」などをご覧いただき、まずは見学に行く施設を絞っていくことが大切です。
そうすることで、無駄な時間を過ごすことなく、必要とする判断材料を集めることができますので、その中から親を預ける施設をじっくり選ぶことができるでしょう。