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老人ホームへ入居するときに何を持って行くべき?

老人ホームへ入居するときに何を持って行くべき?

日本では核家族化や少子高齢化社会がすすんだことによって、親の最期を自宅で看るということがより難しくなっています。そのため、自宅での介護が難しくなったり、親の一人暮らしに不安を抱えたりしたときに「老人ホームへ住み替える」という方法をとる人は少なくありません。

居室が荷物で溢れかえってしまう!?

これを読まれている人の多くも、やっと親の老人ホームを決めることができてホッとしているのではないでしょうか。しかし、老人ホームに入居するための準備も実は大変だということをご存知でしょうか。

引っ越し経験のある方は想像しやすいかと思いますが、引っ越し自体も大変ではありませんでしたか? 家に溢れるものをすべて段ボールに詰めて運び、運んだ先で詰めたものを出しながら整理整頓しなければなりません。家族の人数が多いとその作業はさらに大変なものになります。

しかし、老人ホームに引っ越しをする場合は親1人、もしくは夫婦2人だけです。運び込む量もさほど多くはありません。では、なぜ老人ホームへの入居準備が大変なのでしょうか。

それは、通常の引っ越しとは違って家にあるものをすべて老人ホームに持ち込むことができないからです。たとえば、認知症を患う方を対象とした認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の居室の床面積は7.43㎡以上という基準が設けられています。同じように、サービス付き高齢者向け住宅の居室床面積は18㎡以上(別に共用スペースがある場合の基準値)となっています。

もちろん、基準値よりも居室を広くとっている施設もありますが、親が今まで住んでいた家に比べると手狭になることは間違いありません。また、居室には介護用ベッド、また衣服や小物を入れる収納家具を置く必要があります。そのため、居室のスペースはさらに狭くなるのです。

このようなことから、親の持ち物をすべて施設に持ち込むことは不可能だとわかります。したがって、生活に必要なものを選りすぐる必要性があるのです。

ただ、親が長年住み続けた家には物があふれていることが多くあります。その中から、突然「生活に必要な物」といわれても迷ってしまう人もたくさんいるのではないでしょうか。旅行へ行くときに「もしかしたら必要かもしれない」とついつい荷物が増えてしまうように、あれもこれも持って行ってしまうと居室が物で溢れてしまうことになってしまいます。

そこで、今回は「老人ホームへ入居するときに持っていくものを決めるポイント」についてご紹介していきます。

居室に持ち込んでよいもの・持ち込めないもの

老人ホームへ入居するときに持っていくものを決めるポイントの1つ目は、「居室に持ち込んでよいもの」と「持ち込んではいけないもの」を理解することです。老人ホームの見学の際に家族から「テレビを居室に置いてもいいですか?」「冷蔵庫を持ち込むことはできますか?」などのような質問を受けることがあります。

テレビや冷蔵庫を持ち込むことに対して、ほとんどの施設が「持ち込んでもよい」としています。しかし、親の心身の状況によっては居室にわざわざ置く必要がなかったり、置かない方がよいと判断されたりする場合もあります。

たとえば、テレビに関しては居室に置かなくても共用スペースに設置されていて誰でも観ることができるようになっている施設が多いです。そのため、施設の方針で入居者が居室に閉じこもらないようにあえて居室へのテレビの設置をおすすめしていないというケースもあります。

特に、グループホームや特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホームに入居する人は一日を通して介護が必要な状態の方が多いです。したがって、居室に一人で過ごす時間よりも共用スペースで過ごす時間が長くなります。このようなケースでは、手狭な居室にテレビをわざわざ置く必要はないのではないかと考えられます。

その一方で、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、またケアハウスのように自立している方が多く入居する施設では居室で過ごす時間も長くなるためテレビを持ち込む方が多いです。

ただ、昭和30年代以降に生まれた人たちは家庭にテレビが当り前のようにあった世代です。そのため、生活の中にテレビの音が流れていないと落ち着かない、起きたらとりあえずテレビが観たいというような人もいます。このようなことから、「入居者自身がどうしても部屋にテレビが欲しい」ということであれば、介護状態に関わらずテレビを持ち込むようにしましょう。

また同様に、施設から食事や飲み物が出るのであれば冷蔵庫を置く必要もありません。どうしても、ご本人の好きな物を置いてあげたいという場合には、施設の冷蔵庫で保管していただく方法もあります。飲み物や果物など、量がそれほど多くなければ、施設の冷蔵庫で預かってくれるでしょう。

しかし、施設の保管方法によっては、「他の入居者があなたの親の飲み物を間違って飲んでしまう」「置いていた果物が無くなった」といったトラブルにつながる可能性もあります。

したがって、こうしたトラブルを避けたい方については、居室に冷蔵庫を設置することをお勧めします。ただし、その際に入居者や家族が気をつけておかなければならないのは「消費(賞味)期限の管理ができるか」ということです。基本的に居室に設置した冷蔵庫内の食べ物の管理は、入居者もしくはそのご家族になります。そのため、入居者が認知症を患っており、傷んだ果物も気づかずに食べてしまう恐れがある場合は、冷蔵庫の設置は避けた方がよいでしょう。

その他にも、仏壇や家族のお位牌などの持ち込みはよしとしている施設もあります。ただし、お線香やろうそくなど火を使うものは火災予防のために原則禁止の施設がほとんどです。

次は「施設に持ち込んではいけないもの」について解説していきます。

たとえば、カッターや大きなハサミなどの刃物、ライターやマッチなどです。これらは、大怪我や火災を引き起こしてしまう危険があるため持ち込みを禁止している施設が少なくありません。

その他にも、縫い針や画びょうなども持ち込めなかったり、居室ではなく施設側でお預かりして必要なときにお出しするという形式をとっていたりする施設もあります。特に、入居者が認知症を患っている場合は、施設のスタッフに必ず確認してから持ち込むようにしましょう。

なぜなら、縫い針や画びょうなどの小さなものは失くしてしまいやすく、認知症を患っている方はなおさら置き忘れてしまう可能性が高くなるからです。また、こうしたものを誤って口に入れてしまう危険性もあります。認知症を患っている方は、食べられないものを口にしてしまう「異食」という行動がみられることもありますので、持ち込むものには細心の注意が必要です。

このように、施設に持ち込みが禁止されているものは、入居される本人や周りの入居者にとって危険がともなったりケガや事故を起こしたりしてしまう可能性があるという理由から禁止されています。そのため、自宅では親が管理できていたからといっても持ち込むことができない場合があることを理解しておきましょう。

状況に合わせた家具を選ぶ

施設によっては、衣服の収納棚や介護用ベッドをあらかじめ居室に備え付けている場合もあります。そのような場合は、家具をあえて持ち込む必要がないため家族が悩むこともありません。その一方で、居室にカーテンも家具も何もない状態での入居になる施設もあります。このようなケースでは、一から準備しなければいけないため、「どのようなものを持ち込めばよいのか」「新しく買いそろえなければいけないのか」と悩む方は多いです。

その中で参考として施設に入居されている方の居室を見せていただくと、部屋の雰囲気も十人十色です。もちろん、老人ホームの種類や居室の広さによっても異なりますが、様々な部屋を見ていると余計に迷ってしまうのではないでしょうか。

実際、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は介護を必要としない自立した方が入居できる施設も少なくありません。そのため、個室にトイレだけでなくお風呂やキッチンが付いている居室もあります。このような居室を見せていただくと、施設というよりもアパートの一室のような雰囲気です。

たとえば、テレビや冷蔵庫だけでなくテーブル式のコタツを持ち込まれて趣味のパズルを楽しまれている方もいました。食事は施設が準備してくれますが、キッチンでお湯を沸かしてお茶を飲まれたり、自室で毎晩入浴されていたりというように、居室には生活に必要な物がほとんど揃っているようでした。

その一方で、要介護度3以上で日常の生活に常に介護が必要な方が多く入居されている特別養護老人ホームの居室をみると介護用ベッドとタンス、小物を整理する棚程度しか置かれていないところが多いです。介護度が高くなると、居室で一人で過ごすことよりも共用スペースで過ごす時間の方が長くなります。そのため、居室に机やイス、テレビなどがなくても困ることはありません。

また、車椅子が必要なケースでは居室内でも車椅子が動かしやすいようにスペースを確保しておく必要があります。このような点から、居室内にはできるだけ物を置かないことが望ましいです。

ただし、物が少ない居室はそれだけで寂しい印象を持たれやすいです。特に、認知症を患われている方にとって部屋に自分のものが少ないと不安になってしまう原因にもなります。したがって、居室に持ち込むタンスなどはご本人が使い慣れている物にするなどの工夫が必要です。その他にも、家族の写真を飾ったりご本人の趣味の物を置いたりすることも効果的です。

たとえば、手芸がお好きなのであれば手芸道具や作品を飾るのもよいでしょう。もちろん、認知症などや病気によって手芸自体はできなくなっていることもあるかもしれません。それでも、入居者の好きなものや馴染みのあるものが居室にあることによって居室自体がご本人の落ち着ける空間となるのです。

このように、ご本人が安心できる馴染みのものをおくことで施設へ入居するという不安を減らすこともできます。そのためにも、自宅で使っていた家具がそのまま使えれば一番よいのですが、必要以上に大きな家具を持ち込むと居室をさらに狭くしてしまう原因にもなりますので注意が必要です。

また、常に車椅子を使うような状態でなかったとしても、体調を崩したときなどに一時的に車椅子を使ったりスタッフに身体介護をお願いしたりすることあります。そのような時に、家具が邪魔になって車椅子が居室に入れなかったり移動するために十分なスペースがなかったりという問題が生じることもあります。このようなことからも、一片に家具をたくさん持ち込まないことが大切です。

まずは、ベッドとタンスと小物を整理する棚などを置いてみて実際に生活していく中で必要だと感じる家具があれば、その都度持ち込んでいくような方法をとると良いでしょう。

さらに、居室に置く家具は安全面にも気を配らなければなりません。たとえば、収納のために持ち込むタンスや棚は、運びやすいようにプラスチック製のものを選ばれる方が多いです。しかし、安全面から考えると少々重くても安定感のある木製のものを選ぶべきかもしれません。

なぜなら、スペースのある居室の中で親が転びそうになった時に家具が支えとなって転倒を予防できる可能性があるからです。

たとえば、日常生活の中で親が転倒するかもしれない場面として多いのは、ベッドから立ち上がる時や夜間トイレなどに移動する際などが挙げられます。このような場面でふらついた親が咄嗟に手を伸ばすのが、タンスなどの家具です。そのため、もし家具に安定感がなかったり、キャスターなどが付いていたりしたら手を伸ばした親はその家具と一緒に転倒してしまう可能性もあります。

このようなことから、転倒事故を防ぐためにふらつきやすい場所に支えとなる家具を設置する方もいます。その場合は、固定できる家具や重量感があって動きにくいものを選ぶとよいでしょう。

入居の際に最低限必要なものを準備

老人ホームに入居する際には、家具だけではなくて日常生活に必要なこまごまとした物が必要です。では、実際にどのようなものをどれだけ準備する必要があるのでしょうか。

たとえば、ケアハウスや住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの施設は賃貸アパートのような位置づけです。したがって、施設によっては居室のカーテンや寝具セット一式などを入居者が準備しなければいけないケースもあります。中には寝具などは業者からのレンタル方式を導入している施設もあります。そのため、入居前に施設の担当者へ確認しておくとよいでしょう。

また、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅には、お風呂やキッチンが付いている部屋もあります。なお、こうした施設には居室にそれぞれトイレが付いているところも多いです。基本的には、これら居室内にあるものに必要な消耗品は入居者が揃えなければなりません。具体的には、トイレットペーパーや掃除道具などです。ただし、施設によってはトイレ掃除はスタッフがおこなうというケースもありますので、入居前に確認しておくようにしましょう。

つぎに、どの施設であっても持ち込みが必要な洋服や生活必需品について具体的にお伝えしていきます。

たとえば、下着は上下セットが1週間分(7枚ずつ)あれば洗濯しながら使いまわしが可能です。高齢になると冷え性の方も多いため、冬用の下着も用意していた方が良い場合もあります。

同じように、洋服も上下それぞれ1週間分あれば十分です。だた、施設内は一年を通して室温管理がされているため、夏であってもエアコンがきいている室内にいると半袖一枚では体が冷えすぎてしまうと感じる人もいます。そのため、重ね着できるような薄手のカーディガンなど上着を準備しておくとよいでしょう。反対に冬場は室内がさほど寒くないため「セーターは暑い」といって、トレーナーなどで過ごす入居者もいます。

また、普段着は安価で丈夫なものがおすすめです。なぜなら、入居者の服はまとめて施設内で洗濯したり業者に依頼したりすることもあるからです。もちろん、セーターなどは家族が自宅で洗濯してもよいのですが、毎回持ち帰るとなると負担になります。

そのため、ドライ物や高級な洋服は持って行かない方が良いかもしれません。もしくは、傷むことも理解した上で持ち込む服を選ぶようにしましょう。

中には、自宅にある洋服を全部持ち込む人もいますが、タンスの中をいっぱいにしてしまうことはおススメできません。なぜなら、タンスの中がいっぱいの状態だと、日々の業務に追われている介護スタッフは手前にある洋服ばかりを取り出すようになり、「いつも同じ服を着ている……」という状況を引き起こしかねないからです。

そのため、洋服が選びやすいようタンスの中はスペースを空けてゆとりを持たせておくことをおススメします。

このような点からも、下着や洋服は必要以上に持ち込まずに1週間分程度が適切だと思われます。ただ、親が自宅を処分して老人ホームに入居するケースでは一年分の衣服の保管方法を検討しなければなりません。施設によっては、季節ものの服が保管できるスペースを別に確保している場合もありますので、迷った場合は施設の担当者に確認するようにしましょう。

その他、入居時に必要なものとしては、パジャマ、タオル、バスタオル、歯磨きセット、入れ歯ケース、入浴セット(石鹸など)、ヘアブラシ、髭剃り、靴下、ハンドタオル、内服薬、時計、化粧品などです。

パジャマは、洗濯や汚れた時のことを考えて上下3組あると施設側は慌てずにすみます。また、身の回りの物だけでなく、お薬手帳や血圧手帳、医療保険者証、介護保険者証なども持参するようにと言われるケースもありますので、持参する必要があるかを確認しましょう。このように、生活していく上で必要なものと考えると、その種類は意外に多いです。施設によっては、細かく準備するものを一覧にしていることもありますが、入居者側も事前に心づもりしておくことで慌てずにすみます。

以下に、老人ホームへ入居する際に必要なものをまとめておきます。

●フェイスタオル   4枚
●バスタオル     2枚
●下着上下      7枚ずつ
●ズボン下      4枚
●上着        最低でも3日分
●ズボン       最低でも3日分
●カーディガンなどの羽織るもの
●パジャマ上下    3組
●靴下        最低でも3足
●歯磨きセット(歯ブラシ・コップ・歯磨き粉)
●入れ歯ケース(必要な方のみ)
●入浴セット(シャンプー・リンス・ボディソープ・洗身用タオル)
●ヘアブラシ
●髭剃り(必要な方のみ)
●ハンドタオル    最低でも3枚
●時計(必要な方のみ)
●化粧品
●お薬(内服薬・点眼液・塗り薬など)
●お薬手帳
●医療保険者証
●介護保険者証
●障害者手帳
●お茶碗
●お箸
●湯呑
●箱ティッシュ
●トイレットペーパー
※施設によっては必要ないものもありますので、あらかじめご了承ください。

このように、まずは必要最低限のものを準備することが大切です。その後は、介護スタッフに足りないものや必要なものはないか尋ねながらその都度そろえていくとよいでしょう。

また、ご家族の中には「親の新生活のために」という理由から居室に持ち込むものを新品で揃える人もいます。しかし、親自身は長年住み慣れた自宅を離れて、新しい場所に住み替えることだけでも不安でいっぱいのはずです。したがって、本人の落ち着ける空間にするために思い入れのある服や家具などを持ち込んだ方がよいのか、それとも新しく買い直したものを持ち込んだ方が本人に喜んでもらえるのかについて、しっかり検討しながら判断するようにしましょう。