夫婦で一緒に入れる老人ホームを探す
全国的に見ても老人ホームの居室の多くは1人部屋となっています。その理由は単純で「夫婦一緒に入れる老人ホームを探す人が少ない」ということが挙げられます。
「夫婦一緒に入れる老人ホームを探す人が少ない」のはなぜ?
やはり、夫婦で暮らすなら介護体制が整った老人ホームより住み慣れた自宅の方がよいと思われる人が多いのではないでしょうか。
また、夫婦のどちらかが病気や加齢に伴う身体機能の低下で要介護状態になっても、その時期が重なるケースはほとんどありません。
そのため、夫婦のどちらかが配偶者を介護する。もしくは、体力的な問題から身体的な介助ができなくても、子供の支援を受けたり、訪問介護(ホームヘルパーの派遣)やデイサービスなどを利用したりしながら在宅生活を続けることができるのです。
とは言え、夫婦で一緒に入れる老人ホームを探す人がいないわけではありません。
実際に「介護をしてくれる子供がいない」「子供には迷惑をかけたくない」「夫婦共に要介護状態になってしまった」というようなことから老人ホームを探す人たちもいるのです。
そこで今回は夫婦で一緒に入れる老人ホームを探すときに注意すべきポイントについて解説していきます。
夫婦の要介護認定を踏まえて老人ホームの選択肢を絞る
老人ホームはそれぞれの施設で入居時の要件(主に要介護認定)を定めています。たとえば、65歳以上の高齢者であれば要介護認定を受けていなくても入居できる施設もあれば、要介護1以上の認定を受けていなければ入居できない施設もあります。
したがって、夫婦の希望に合った老人ホームが見つかったとしても、入居時の要件を満たしていないために入居することができない場合もあるのです。
入居できないケースとして特に多いのは「夫婦のどちらかが要介護認定を受けていない状態(自立)でもう一方の配偶者が要介護認定を受けている」ときです。
なぜなら、老人ホームの多くは、入居時の要件を少なくとも“要支援1以上の認定を受けている人”と定めているからです。
そのため、こうした要件を定めている施設には要介護認定を受けている人しか入居できません。中には、要介護認定を受けている人の配偶者や60歳以上の親族であれば、入居できる施設もありますが、そうした施設の数は限られています。
したがって、希望に合う施設が見つかった場合は、はじめに入居時の要件を確認して見学するようにしましょう。
施設で受けられる介護サービスの内容を確認する
一口に老人ホームといっても、そのサービス内容はそれぞれ異なります。たとえば、標準サービスが食事の提供と安否確認だけという施設もあれば、寝たきりの状態になっても定額料金で手厚く介護してくれる施設もあります。
そのため、夫婦で一緒に入れる老人ホームを探す前に入居する施設に求める介護サービスを頭の中で整理しておくようにしましょう。
ここで、特に考えておかなければならないのは、要介護認定を受けている方のトイレ介助です。なぜなら、老人ホームの種類によっては介護スタッフがトイレ介助を行うたびに費用が発生する施設もあるからです。
実際、入居時は一人でトイレに行くことができたけれど、加齢とともに介助が必要になる場合もあります。そのときに同居している配偶者が介助できれば問題ありませんが、高齢になった配偶者がトイレ介助を毎日続けることは非常に困難です。
そこで介護スタッフにトイレ介助を依頼することになるのですが、そうしたサービスは数時間おきに必要となりますので、毎月の費用負担が大きくなります。
ただ、この費用負担がまったく気にならないのであれば問題ありませんが、現実的には「毎月の家賃や食費の支払いで精一杯です」という人も少なくありません。
中には、要介護度に応じて介護サービスの利用料金が決まっている施設もありますが、そうした施設の多くは入居時の要件が要介護1以上となっています。そのため、介護サービスの必要性が低い配偶者(自立や要支援1・2の人)が入居できない場合もあるのです。
こうしたことから、夫婦で一緒に入れたけれど、入居後の心身の状態の変化によっては、夫婦のどちらかが別の施設に転居しなければならない可能性があることも考慮しながら施設を選ぶようにしましょう。
1人部屋を2つ借りるという選択肢もある
夫婦で一緒に入れる老人ホームを探す際、多くの人は夫婦部屋(2人部屋)がある施設の情報を集めようとするのではないでしょうか? 実際、私が介護の仕事をしていなかった場合はこれと同じような探し方をするかもしれません。
ただ、夫婦で老人ホームに入居した人は必ずしも夫婦部屋を選んでいるわけではなりません。中には、1人部屋を2つ借りて夫婦仲良く暮らしている人もいるのです。
なぜそうなったのかというと、「1人部屋に比べて夫婦部屋が圧倒的に少ない」ということが理由に挙げられますが、その他にも「2人で一日中同じ部屋で過ごすのは疲れる」「介護者の負担を軽減する」といった理由から別々に部屋を借りられる方もいます。
実際、夫婦部屋といっても、その広さは30~40㎡程度の施設が多いです。また、その居室も間仕切りがないところも多いため、1人でゆっくり過ごすことができないのです。
あとは、夫婦どちらかの要介護状態が重度化した場合、もう一方の配偶者の介護負担が増えていくことを考慮して部屋を分ける方もいます。
なぜなら、夫婦部屋に入居した場合、要介護状態が軽い入居者が目の前にいる要介護状態の重い配偶者の介護を無理して行う傾向があるからです。これでは、老人ホームに入居している意味がありません。
ただし、経済面では夫婦部屋を借りた方が毎月の費用を抑えることができます。その反面、夫婦のどちらかが施設を退去しなければならない状態になったときは、夫婦部屋の家賃が負担になります。
こうしたことから、毎月の費用を抑えるために残った配偶者も夫婦部屋から1人部屋に移る人もいます。
その他、1人部屋を2つ借りても、日中を過ごす部屋と寝室に分けていつも一緒に過ごしているご夫婦もいますので、結局はどちらの選択肢が正しいというわけでもありません。
あとは、それぞれのメリットとデメリットを比較しながら検討することで納得のいく施設を選ぶことができるでしょう。