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元気なうちから老人ホームに入居する

元気なうちから老人ホームに入居する

老人ホームに入居しているのは認知症を患ったり、トイレ介助が必要になったりした高齢者と考えている人は少なくありません。しかし、実際にはそうした状態になっていないにもかかわらず、施設に入居する人もたくさんいます。

具体的にどのような理由で老人ホームに入居しているの?

具体的にどのような理由で老人ホームに入居しているのかというと、毎日食事を作るのが億劫になってきた。または最近、物騒な世の中になってきたので、このまま一人暮らしを続けることが不安になってきた。あとは、元気なうちから老人ホームに入居して、老後の不安を解消したい。

中には、こうした理由で老人ホームでの生活を選ぶ人もいます。

このようなときは介護が必要になった方の老人ホーム探しとは違い、施設を選ぶまでの時間に余裕があります。とは言え、こうした状況の方が選べる施設の選択肢は限られているため、入居まで何年も待たされる場合もあります。

その他にも、施設見学後に「想像していた生活とまったく違っていた」という理由から老人ホームの入居自体を見送る人もいます。

したがって、今回は元気なうちから入居する老人ホームを探すときに注意すべき点について解説していきます。

浴室やキッチンが無くても生活に支障はないのか?

介護が必要になった方の老人ホーム探しとは違い、一人暮らしが継続できるような人は入浴で介助を受ける必要はありませんし、毎日は大変だけれど食事を作ること自体はできる人もいます。そのため、浴室やキッチンがある居室を希望される人は多いです。

しかし、多くの老人ホームでは他の入居者と共同で浴室やキッチンを使用することになっていますので、「自分の好きな時間帯に入浴することができない」「本格的な料理ができない」といったことから入居を取りやめる方もいます。

中には各居室に浴室とキッチンがある施設もありますが、そうした施設は毎月の費用が20万円を超える場合もあります。

また、元気なうちから老人ホームに入居するような方が2,3年で退去するケースはほとんどありません。そのため、多くの人は「20万円をずっと払い続けることはできない」という理由で入居を諦めるのです。

ただし、こうした判断ができる人は、基本的に老人ホームに入らなければ今住んでいる自宅で生活することができないわけではありません。それに、料理ができるにもかかわらず、料理をしなくてもよい環境で生活するのは入居者の老化を早めてしまいます。

実際、介護が必要な状態になっても訪問介護(ホームヘルパーの派遣)やデイサービスを利用したり、家族の支援を受けたりしながら入居の時期を遅らせることもできますので、判断に迷われた場合は慌てずにゆっくり検討するようにしましょう。

終の棲家にはならないがあることも理解しておく

一般的に老人ホームでは介護が必要な人が生活しているというイメージを持たれているため、“終の棲家”と捉えている人も少なくありません。

そのため、元気なうちから老人ホームに入居する方の中には、「これで老後は安心だ」と考えている人もいますが、実際はその施設で人生の最期まで過ごせるかどうかはわかりません。むしろ、こうした施設が“終の棲家”になる可能性は低いということを知っていた方が、いざとなったときに慌てなくて済みます。

中には終身利用を特長にしている老人ホームもありますが、入居者がどのような状態になっても最期までお世話をしてくれるわけではありません。

具体的には寝たきりの状態になっても最期まで介護してくれる施設もあれば、食堂まで一人で歩けなくなった時点で退去を求められる施設もあるのです。こうした基準は施設ごとで異なりますが、同じ老人ホームでもこのような違いがあることを知っておきましょう。

特に元気なうちから入居できる老人ホームは、介護サービスが充実している施設がほとんどありません。なぜなら、入居者の大半は元気な高齢者ばかりなので、スタッフの人員配置が少ないからです。

こうしたことから、実際に介護が必要になっても手厚いサービスが受けられない場合もあるのです。

なお、検討している施設の介護サービスが充実しているのかについては、施設の担当者(施設長や相談員)に「どのような状態になるまで看てもらえるのでしょうか?」と質問することで確認できます。その目安は大きく3つに分かれますが、1つ目は食堂まで一人で歩いていけなくなる。2つ目は認知症が進行して他の入居者に迷惑をかけるようになる。3つ目は口からご飯が食べられなくなる。

こうしたことを事前に確認しておくことで、入居後の不安も少しは解消されるのではないでしょうか。

とは言え、選んだ施設が“終の棲家”にならない可能性があるのであれば、老後の不安は残ったままとなります。そこで、次の項では住み慣れた施設を退去しなければならなくなったときの対策について解説します。

終の棲家は自分一人では選べない

老人ホームに入居したので、もうこれで老後は安心だ。そう考えている人は少なくありませんが、現実は必ずしもそうではありません。

なぜなら、前項でもお話ししたとおり、「どのような状態になるまで看ることができるのか」という目安は施設ごとで異なりますので、身体機能の低下や認知症の進行で住み慣れた施設を退去しなければならない可能性があるからです。

とは言え、人は誰しも、加齢に伴って身体機能は少しずつ衰えていきますし、何事もきちんと判断できていた人が認知症になる可能性もあります。したがって、老人ホームに入居した後もこのような状態になったときの対策を講じておくことは大切です。

しかし、実際は「一人で外出することができなくなった」、さらには「認知症を患ってしまった」という状態になった場合は、入居者自身が転居先の施設を探すことはできません。そのため、こうした状態になったときの対策として考えておかなければならないのは「誰に終の棲家を探してもらうのか?」ということです。

その“誰”に当てはまる人としてよく挙げられるのが入居者の“子供”です。その他にも、姉妹や姪が入居者の代わりに転居先の施設を探す場合もありますが、入居者が判断力のあるうちに誰にお願いするかをきちんと決めておくのです。

そして、お願いする人には「老人ホームの生活に充てられる費用」「どういった環境での生活を望んでいるのか」「どのような最期を迎えたいのか」ということを伝えるようにしましょう。

実際、老人ホームの費用以外にも病気で入院したときやお葬式に充てる費用なども確保しておかなければなりませんし、キーパーソン(お願いする家族)に余分な費用を負担させないための予算も確保しておくことが望ましいです。

ただし、こうした資産の状況を入居者しか把握していないのであれば意味がありません。

病気や事故で、ある日突然お金の管理ができなくなることを想定して、キーパーソンにも資産の状況を把握してもらうようにしましょう。また、入居者が転居先の老人ホームを探せないような状態になった場合は、将来を見据えてキーパーソンが住んでいる地域にある老人ホームを選ばれることをお勧めします。

なぜなら、日常的に介護が必要な状態になってくるとキーパーソンの支援が必要になる機会が少しずつ増えてくるからです。具体的には外来受診の同行や入退院の手続き、また自己決定ができなくなった入居者の代わりに家族が治療方針を決める場合もあります。

このようなことを考慮しながらキーパーソンに希望を伝えておくことで、キーパーソンは迷いなく入居者を支援することができますし、入居者自身も老後の不安を解消することができるのではないでしょうか。